リアリティーと
意外性を備えた、
小説のような時計
作家、とくに小説の書き手として表に出る際、池井戸潤さんが好んで身につけるものがある。フランク ミュラーのトノウ カーベックス ヴェガスというモデルだ。
「カジノで回るルーレットを見てインスピレーションを得てつくったと言われていますよね。時計は1秒、また1秒と確実に時を刻んでいくものですが、そこにルーレットというまったく異なる性質のものを重ねる発想がユニーク。僕はそれを知ったとき、ヴェガスは小説と同じようにつくられているんだと思いました。ストーリーの展開や登場する人間のリアリティーを正確になぞりながら、一方で常に意外性をはらんでいなければならない。小説と同じく、この時計には現実と虚構の両要素が備わっているんだと。ルーレット針が指す数字がその日のラッキーナンバーというつくり手の遊び心も、すごく効いている」
人生観や価値観と
共振するもので
あってほしい
時計という日々の相棒を選ぶ決め手になるのが物語性というのも、ストーリーテラーならでは。オンでもオフでも、それぞれの場所にフィットした物語のある一本を選ぶ。
「気のおけない友人たちと一緒に出かけるときは、シークレットアワーズ。楽しい場では時間を忘れていられるように常に12時を差していて、ボタンを押したときだけ正確な時間を示す時計なんてフランク ミュラー以外にはできない発想ですよ。それぞれの時計に名前がついているのも、まるで小説のタイトルのよう。実用品である以上に、僕にとっての時計は時を豊かに過ごすためのもの。だから、人生観や価値観とどこか共振するものであってほしいんです」
ヴァンガードは
革新から生まれた
新たな物語
ヴァンガードのコレクションの中から、池井戸さんはマスターバンカーを手に取った。常に新しく独創的な世界を創り出すその人に、“革新”の名を持つ時計は、よく似合う。
「僕の仕事に置き換えるなら、大切なのは革新というより〝発明〟〝提案〟かな。ひとつの物語を作り上げるとき、何度か難しい局面に立たされますが、そこを切り抜けるためには発明が必要。そうして生まれた物語を世の中に提案するのが、作家の仕事だと思っています」