FRANCK MULLER Experience
フランク ミュラー×萌木の村 ROCK
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Franck Muller celebrates our 30th anniversary.

フランク ミュラーは、現代の天才時計師と讃えられています。非凡な時計師として広く知られるようになって以来、トゥールビヨンを軸として、パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーターを加えた三大複雑機構を1本の腕時計に複数搭載し、さらに、様々な複雑機構を組み合わせたモデルなどまで、超のつく複雑時計を発表してきました。1980年代のスイス時計産業を見渡しても、これほど高度な複雑機構を搭載した腕時計を、一人の独立時計師が考案し、手作業で完成させた例は、他に見当たりません。しかも、登録された特許は50件以上になります。

フランク ミュラーが備えている、自由でユニークな発想のおかげで、腕時計では絶対に不可能であると言われていた、世界初にこだわった複雑な機構を数多く発表してきました。彼の真価は、メカニズムの側面から注目されることが多いのですが、もちろん、そればかりではありません。彼らしい、オリジナリティの高い創造力を発揮し、斬新で、美しいトノウ カーベックスと呼ぶケース、印象深いビザン数字というインデックスなど、アヴァンギャルドとも言える、まったく新しいデザインを創造し、高級腕時計の世界に魅力の溢れる一石を投じています。

いまや、フランク ミュラーを代表する、ケースデザインとなっているトノウ カーベックス、そして、インデックスであるビザン数字は、どのようにして、誕生したのでしょうか。

「1986年にイタリアのビチェンツァで開催された見本市でのことですが、オリジナルデザインの腕時計を出品し、おおいに注目を集めました。私が手掛ける複雑時計を熱烈に愛してくださる、あるイタリア人実業家の奥さまから注文を受け、製作したものです。彼女から、あなたが製作する複雑機構は素晴らしいのだけれど、古めかしい丸形ケースばかりなので、あなた自身がすべてを手掛けた、オリジナルデザインの腕時計が欲しい、と言われたのです」

愛好家の奥さまから受けた言葉が、フランク ミュラーの創作意欲を刺激してしまいました。痛いところを突かれたと感じ、なんとか期待に応えようと、おおいに奮闘したのです。しかし、おかげで、世界の時計界を驚かす逸品が登場することとなりました。

「ビチェンツァの見本市に出品したのは、1本だけ製作したトノウ カーベックスです。依頼主である愛好家の奥さまには、とても喜んでいただきました。正式名称は、CINTRÉE CURVEX/サントレ カーベックスと言います。すべてのケース側面を3D曲面で構成していますが、私が発想したオリジナルです。量産するつもりはなかったのですが、問い合わせが多かったことも事実です。だから、ブランドを始めるときには、コレクションに加えました」

実は、トノウ カーベックスには、もう1点、斬新な試みがプラスされていました。文字盤に彩りを添えた、ビザン数字です。

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「時刻を読み取るための、視認性を考えたのです。年齢を重ねていくと、人によっては、次第に時刻の表示が読み取りにくくなっていきます。ならば、数字を大きくしてみようと考えたのですが、数字だけを拡大していくと、ひとつひとつの数字は読み取りやすくなりますが、文字盤全体のバランスからも、デザインそのものも考え直す必要があると感じました」

そこで、フランク ミュラーらしく、スタイリッシュにアレンジした数字をデザインしたのです。発想の原点となったのは、1900年代初期に存在したというアラビア数字でした。

「アレンジする、と言うのは簡単ですが、数字のデザインは難しいんです。プロポーションやバランスが微妙で、しかも、文字盤上にレイアウトするのは骨の折れる仕事でした」

数字を大きくしていくと、ある時刻を針が指し示すとき、見た目でも、その数字にピタリと合っているようにするには、数字の位置決めが微妙で、調整しなければいけません。

「ギリシャ神殿の円柱もそうですが。見た目で同じ太さの円柱であると感じさせるため、上に行くほど太くし、視覚上のトリックを使っています。ビザン数字も、同じです」

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5850CCCFO CASABLANCA CHRONOGRAPH

フランク ミュラー自身が、デザインウォッチと呼んでいるコレクションは、美しさを求める彼の姿勢を感じさせる、とても大切なコレクションです。なかでも、代表的な存在が、このカサブランカ。創作へのインスピレーションを受け、モデル名の由来となったのは、あの有名な映画『カサブランカ』です。映画をご覧になった方なら理解しやすいと思いますが、モロッコの都会に漂うエレガントなヨーロッパの香り、サハラ砂漠の色合い、登場人物や場面設定によるダンディズムなど、画面いっぱいの洒落た感覚がフランク ミュラーのイメージに合致したのです。カサブランカは、当初、フランク ミュラー初のステンレススティール モデルとして登場しました。ゴールドよりも傷つきにくいタフなケースは、サハラ砂漠の舞い上がる砂塵からメカニズムを保護し、さらに、街路灯のない真っ暗な夜道でも視認性を確保する蓄光塗料を施した文字盤は、敢えて紫外線から保護するための焼け止めコーティングを施さず、使い込むほどにエイジングされ、風合いのある文字盤となります。紹介しているカサブランカ クロノグラフは、小振りな丸型プッシュボタンにより、クラシカルな文字盤のツーカウンタークロノのデザインを完璧なバランスで仕上げています。

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CINTRÉE CURVEX WORLD WIDE “AMERICA”
ワールド ワイド コレクションという、希少なモデルです。エナメルギョウシェ文字盤に、それぞれ国別に色分けした、ヨーロッパ、アフリカ、オセアニア、アジア、そして、アメリカという5大陸を美しく描いたシリーズ作品で、このモデルは、"アメリカ”バージョンとなります。本来、七宝焼には、有線七宝、無線七宝など、幾つかの手法がありますが、このモデルは、無線七宝を採用しています。無線七宝とは、各色の七宝釉の間に金属線が存在しない手法で、最初は、有線七宝と同じように金属線によって模様をつくり、それぞれ別色の釉薬を差し込んだ後、金属線を取り除き、約900度の高温で焼成します。各色釉間に仕切りがないため、有線七宝のようなクッキリとした輪郭はありませんが、輪郭部が柔らかで滑らかな独特の仕上がりとなります。実は、フランク ミュラーの「国に境はあっても、そこに"壁"をつくるべきではない」という願いから、無線七宝の手法を選んだ、というエピソードが残されています。また、このモデルは、GMT機能を装備しています。時針、分針、秒針に加え、蛇行しているようなサーペンドハンド(蛇型針)が、円周の24時間表示を指し、任意の異なる国に時間に合わせておけば、つねに希望する国の時間を知ることができます。

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FRANCK MULLER GENEVE