これから数日、雨の予報はない。旅に出たい、でも、何処へ。そんな時には、まず、本棚へ直行する。エリア別に整えられている、厚めの地図を目で追っていく。液晶ディスプレイの画面を睨み、キーボードとマウスを駆使するのも嫌いではない。しかし、なぜか紙でできたマップのほうが想像を膨らませることができる。ルートも、風景も、立ち寄るべきレストランも、寛ぎのホテルも、次から次へと浮かんでくる。タイミング良く、エンジンとミッションのオイル交換を済ませたばかりだ。明朝、タイヤのプレッシャーを確認し、出発に備える。
愛車は、基本的に、マニュアルシフトしか考えられない。メカニズムを操る、あの感覚を大切にしたいからだ。たとえば、朝一番の儀式として、もちろん暖機運転は欠かさない。諸説あり、中途半端な暖機運転は、機械の敵だという。しかし、機械ばかりか、とくにロングクルーズが待ち構えているときは、ドライバー本人の気持ちも高めていってくれる。ウォームアップとともに、オイル交換を済ませたばかりの感触が、あらゆる五感に訴えてくる。エンジンにも、ミッションにも、新鮮なオイルが行き渡り、気持ち良さそうな鼓動が響いてくる。
高速道を使うことなく、目的のホテルまで走ってきた。峠や尾根を縫うように張り巡らされた、気持ちの良いワインディングロードを堪能するためである。コーナーに入る手前で、軽くブレーキペダルに触れながらギアを落とし、適度な速度を維持したままコーナーの頂点までいき、次第に加速し、コーナーを抜けていく。連続するコーナーに遭遇するたび、腕と脚が、無意識に、しかし、確実に操作を繰り返す。安全なコーナリングを心掛けるため、自動車レースの経験も豊富な、あるヨーロッパのジャーナリストが著した指南の書も読み込んだ。
愛用するメカニズムを堪能する旅には、トゥールビヨンほど相応しい相棒はいないだろう。それにしても、腕時計にトゥールビヨンを搭載することなど、いったい誰が想像し、実現できたのか。もちろん、フランク ミュラーである。伝統的な複雑機構を熟知していったフランク ミュラーは、ポケットウォッチの時代が終わり、しばらく製作されることのなかったトゥールビヨンに着目し、研究し、文字盤の丸い窓からトゥールビヨン機構が見える腕時計を発表。1986年、世界最大の時計と宝飾の見本市であったバーゼルフェアでのことである。
CX36TCTR ACAC/ GRAND CENTRAL CINTRÉE CURVEX
フランク ミュラーが手掛ける最新のトゥールビヨンは、グランド セントラル トノウ カーベックスです。一般的なラウンド型ではない腕時計ケースで、腕時計の中心部にトゥールビヨン機構を搭載したセントラル トゥールビヨンは、世界初となります。迫力すら感じさせるケージ径17.7mmのトゥールビヨンは、サイズはもちろん、搭載位置も、文字通り主役です。時刻表示は、トゥールビヨンの外周から突き出ている時針と分針で示しますが、針を支持する中心部は隠しています。このミステリアスな表示機構は、セラミック ボールベアリングによる円形部品が、針を支えると同時に、回転も受け持つ画期的な新機軸。また、両方向に巻き上げるマイクロローター式自動巻き機構を装備したトゥールビヨンは、希少な存在であり、パワーリザーブはシングルバレルながら3日半=84時間も持続します。ムーブメントの緩急調整には、18K製タイミングスクリューで調整する緩急針のないフリースプラング方式を採用し、ブレゲひげゼンマイも自社製です。また、注目すべきは、脱進機の部品製造方法です。素材を堆積させるエレクトロフォーミング方式で製造するため、切削による従来工法にくらべ、10倍も精度の高い加工が可能になっています。そして、フランク ミュラーが誇るトノウ カーベックスですが、美しい造形はそのままに、人間工学的な装着感も向上し、進化形となっています。フランク ミュラーのトゥールビヨンは、どこまでも進化することを止めません。
Location of Photo Shoot :
FUJI SPEEDWAY HOTEL