FRANCK MULLER Experience
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Franck Muller celebrates our 30th anniversary.

フランク ミュラーは、2022年、ブランドを創設して30周年を迎えました。彼は、ポケットウォッチ/懐中時計に搭載するため、18世紀ごろに考案された超複雑な機構を小さな腕時計に組み込むという夢のコンセプトを完成させ、現代の天才時計師と讃えられています。しかも、彼は、世界初の超複雑機構の腕時計ばかりか、数多くの新案特許まで発表してきました。

フランク ミュラーの名で登録された特許は、50件以上にもなります。初めてバーゼルフェアに登場して以来、トゥールビヨンを軸として、ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダーを加えた三大複雑機構を1本の腕時計に複数搭載し、さらには、トゥールビヨン以外の複雑機構を組み合わせたモデルなどまで、超のつく複雑時計を立て続けに考案してきました。

初期に創作されたモデルは、いずれも多彩な複雑機構を独創的なスタイルで組み合わせた、世界初の腕時計ばかりで占められています。1980年代のスイス時計産業を見渡してみても、これほど高度な複雑機構を備える腕時計を1人の時計師が考えだし、手づくりで製作してきた例は、まったく見当たりません。フランク ミュラー、ただ1人ではないでしょうか。

やがて、共同経営者となるヴァルタン シルマケスとの出会いがあります。この2人の出会いがあり、フランク ミュラーはムーブメントの、ヴァルタン シルマケスはケースの専門家として、フランク ミュラーという天才時計師の名を冠した腕時計ブランドを発進させるため、大きく動いていきます。ヴァルタン シルマケスは、シンプルな機構でも、フランク ミュラーの魅力が詰まった腕時計を多くの人々に提供していきたい、というビジョンを持っていました。

独立した時計師としてのフランク ミュラーから、腕時計ブランドとしてのフランク ミュラーへ。これまで、特別な愛好家のためにだけ、複雑な機構を備えたオリジナルの腕時計を手づくりで製作してきたフランク ミュラーでした。しかし、ある程度、タイプと数量のあるフランク ミュラー ウォッチを製造していくことへ、ギアを切り替えていくことを提案されたのです。

「熱心な愛好家やコレクターのために製作していた腕時計は、1点だけの製作ですから、当時でも、2,000万円、3,000万円クラスです。30年以上も前の価格ですから、現在ならもっと高額になってしまうでしょう。当然、そんなに高額な腕時計を手にすることができる愛好家は多くはありません。これからは、腕時計ブランドとして、一般の人たちが興味を示す価格帯の腕時計を、ある程度ですが、量産するべきだ、とヴァルタンに説得されたのです」

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フランク ミュラーは、当初、自分自身の腕時計を量産することを断りました。それでも、ヴァルタン シルマケスは、複雑な機構に惹かれる愛好家ばかりではなく、フランク ミュラーという時計師に関心があり、ブランドに魅力を感じる一般の腕時計ユーザーは、必ず存在するはずだ、と考えていたのです。熱心に説得されたフランク ミュラーは、やがて、コレクションとして量産モデルを展開することを了承。ただ、幾つかの条件をつけました。

「まず、ケース素材ですが、ケースのカラーとして、最低でも4色を用意することです。つまり、ホワイトゴールドやイエローゴールド、ピンクゴールドなどですが、最初は、グリーンゴールドまで揃えた、5色のラインアップを考えたほどです。さらに、文字盤のカラーも何色か揃えることも条件としました。そうすれば、デザインの幅が広がり、ユーザーによる選択肢を増やすことができます。“一人ひとりのお客さまのための、あなただけの腕時計”というコンセプトで、意識してカスタムメイドに近い雰囲気を強調したかったのです」

フランク ミュラーが、1992年、初となるコレクションをブランドとして発表したのは、正式名称をSalon International de la Haute Horlogerie、略称をS.I.H.H.という展示会。バーゼルフェアと並ぶ国際高級時計の展示会で、通称ジュネーブサロンとも呼ばれます。

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右)1750S6D2P CINTRÉE CURVEX DOUBLE PASTILLE DIAMOND
左)1750S6DP CINTRÉE CURVEX DIAMOND

トノウ カーベックスの誕生は、フランク ミュラーが、まだ20代の若き独立した独立時計師の頃まで遡ります。熱心なイタリア人愛好家の奥さまから、1本のオーダーメイドを依頼されたことが始まりでした。完全なオリジナルでというオーダーに、天才時計師は創作意欲を刺激され、世界初のフォルムを創り出してしまったのです。平面的なトノウ型とは異なり、独自の3次元曲線による完璧なバランスが生み出す立体的なフォルムは、ケース全体が球体の一部になっているようなイメージです。しかも、徹底した美しさを際立たせるため、文字盤、裏蓋、針、サファイアガラスなど、ケースを構成するパーツまで全体のフォルムとバランスを合わせながら、正確に製作し、組み上げる必要があり、極めて緻密な工作技術が要求されるのです。同時に、ビザン数字も、このトノウ カーベックスのためにフランク ミュラー自身が考案。時刻の視認性を考え、数字を大きくしながら文字盤とのバランスに配慮し、スタイリッシュにデザインしたのです。初めて披露されるとともに、愛好家たちから熱烈に支持されたトノウ カーベックスは、1992年、ブランドとしてスタートした後も、30年間、フランク ミュラーの名声とともに、世界中で愛され続けていることは、ご存じの通りです。

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Blue Enamel/2851S6

美しいブルーエナメル文字盤のモデルは、フランク ミュラーが、ブランド創設初期に製作した希少な名作です。ピンクゴールド製のケースは、現行のトノウ カーベックスより細長いシェイプとなっています。文字盤のエナメル細工は、スイス伝統技法のひとつで、通常はネックレスやブローチといった装飾品に使われています。ただ、時計の場合にも、ポケットウォッチの裏蓋の装飾用などとして採り入れることはありましたが、フランク ミュラーは、大胆にも文字盤に施してしまったわけです。工程としては、文字盤のベースとなる金属製の板に、サンレイバースト/日輪模様のギョウシェを彫り込み、その上に、ガラス質の釉薬を塗り焼き付けるのですが、さらにまた、塗っては焼き付ける工程を11回も繰り返して製作されています。おかげで、シャープなスペード針がゆっくりと回転しながら、美しいガラス質の文字盤上に描かれた金色のビザン数字をなぞっていく様子は、まさに中世ヨーロッパの美意識が文字盤上に凝縮されているかのような感覚で魅せてくれます。繊細で、優雅、しかも、独特の雰囲気を放つブルーエナメルの文字盤と細目のトノウ カーベックスのコンビネーションは、まるで100年以上も前に製作されたアンティークウォッチを思わせます。

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FRANCK MULLER GENEVE