目覚めの曲は、決めている。初夏から盛夏へ向け、少しずつ明るさを取り戻していく空とともに、デッキの上を流れてくるのは、軽快な女性ヴォーカルとテナーサックスとの掛け合い。ブラジルの新しい波が、ジャズのアレンジに出会い、心地の良い音色と歌声が、すっかり身近になった。
なぜか、ジャズに目覚めたころから、気持ちよく音源を奏でてくれる再生装置にも凝るようになっていた。たどり着いた組み合わせは、真空管式のアンプとクラシックな風貌の英国製スピーカー。もちろん、ジャズには向いていない、という噂も聞くが、彼女には、柔らかな音色が、とても素直に溶け込んでくる。とくに、女性ヴォーカルの響きが別格である。
1日中、たっぷりと海上で過ごした夕方。激しい太陽や、風、波に翻弄されたカラダと気持ちも、まず、シャワーと冷えたロゼで癒す。その後、自分の感覚を信じ、彼女自身で決めた再生装置から流れ出る音色を添えれば、その日のフィナーレは、より華やかに彩られ、見事に完結する。
曲の合間に、時折、パーカッションのような合いの手が聞こえてくる。眼下のビーチから、波の音が見事なタイミングで砕けているのだ。フッと、南の島々で過ごした、気だるい空気感が懐かしく感じられる。おかげで、この日も、穏やかな1日を過ごすことができそうである。
この後、さらなる贅沢が許されるならば、地元で採れた野菜と魚介のフリット、さらに冷えた濃いめの白ワインを、テーブルに並べたい。
涼しげなガラステーブルの上に並べられているのは、ヴァンガード レディの新作となるスケルトン モデルである。
ヴァンガード レディらしさに溢れた、大胆さと優雅さを兼ね備えたケース フォルムはもちろん、さらに、文字盤を取り除くことでダイナミックな印象を際立たせ、新時代のレディース ウォッチらしい新たな存在感を主張している。
カラフルなハートが印象的なヴァンガード レディ スケルトン ハート(写真上/右)では、豊満なケースとは対照的な軽快感のあるスケルトン加工で、手作業による繊細なデザインのプレート、6時位置に配されたスモールセコンドなど、美しい手巻きムーブメントを眺めることができる。
ヴァンガード レディ スケルトン ダイヤモンド(写真上/左)では、グラマラスなディテールとダイナミックな曲線によって際立つケースに、時計職人が手作業で丁寧に面取りして仕上げたブリッジ、手巻きムーブメントの細部まで眺めることができる構造美、6時位置に配されたスモールセコンドなど、腕時計づくりの情熱が全身に息づいている。
もちろん、ヴァンガード レディ スケルトンを製造するためには、かなり難易度の高い技量と組み立て作業が要求される。そのため、開発と設計から組み立てまで、すべての工程をフランク ミュラー ウォッチランドが担当することで、綺麗で、かつ存在感のあるスケルトンモデルを提案しながら、時計職人の技と細部へのこだわりをも感じさせる。
時間は、自由なものです。フランク ミュラーは、いつの間にか人々を支配している便宜上の時間から解放することも、自分自身の大切な役目だと考えています。
自分だけの時間を創造することは、フランク ミュラーの永遠のテーマです。そこで、現代の天才時計師は、“クレイジー アワーズ”を発想。ただ、発想は簡単でも、実現することは簡単ではありません。文字盤上に自由にインデックスを配置し、毎正時、そこを目指して時針がジャンプし、時刻を表示する機構となると難易度は高いのです。
「難易度が高い理由は、腕時計が精密機械だからです。機械式メカニズムによって、24時間、365日、そして、何年間も動き続ける精密機器は、機械式腕時計しか存在しません。しかも、こんなに小さくて、腕に着けていると姿勢の変化も激しく、温度変化や衝撃も受けます。“クレイジー アワーズ”の機構は、文字盤の小窓に数字で時刻を表示するジャンピング アワーの応用ですから、毎正時に時針がジャンプしますが、ジャンプする範囲が、毎回、同じでなければ正確に時を刻むことができません」
「時針がジャンプするたびに、腕時計内部の部品には、6Gから8Gもの衝撃が掛かるのですが、その衝撃に耐えるメカニズムを完成させるのに苦労しました。単純に、針がジャンプするだけの機構なら、何種類かあります。しかし、どのような場合でも、正確にジャンプし、きちんと時刻を表示するメカニズムを実現させることは難しい。時は規則正しく流れていくわけですから、正確さといえば、やはり時です。腕時計を製作するうえで、もしかしたら、私の発想はファンタジー過ぎるのかもしれません」
“クレイジー アワーズ”は、ファンタジーかもしれませんが、一方で、腕時計が正確に時を刻むためには、時計師として、現実の技術的な世界に向き合わなくてはいけません。ファンタジーとは、逆ですが、精密な技術を駆使しなければならないのです。
「まず、“クレイジー アワーズ”ですが、見た目の第一印象で、とても面白い腕時計だと感じてもらえるはずです。しかし、当然、見た目の面白さだけでは駄目なのです。確実に、腕時計としての機能を果たさなければいけませんし、正確に時を刻む機能を実現するためには、時計師として、真摯にメカニズムに対して向き合う資質を備えていることが大切です。ぜひ、そこのところを理解し、分かって欲しいと願っています」
「ファンタジーの世界だけを追求していても、成立しません。そういった意味では、ジュネーブの時計学校でキチンと学びましたし、首席で卒業しました。同時に、旧い複雑な時計を修復することで技術を磨いてきました。そうした背景があるからこそ、機械としての正確な腕時計の機構を発想し、製作することができるのです」
「宇宙は、あるがままに存在し、時間は、人間が創り出した便宜上の概念です。ところが、人間は、自らが創り出した便宜上の概念に支配されました」
複雑時計の魔術師と呼ばれ、天才時計師の名声を欲しいままにしてきたフランク ミュラーですが、時に、彼の天賦の才は、奇想天外なアイディアによって自分だけの時間を発想します。時間は、他の誰のものでもなく、自分自身だけの極めて個人的な価値を持つものです。何にも縛られない、自由闊達な時間の創作。それは、日常生活を独創的に過ごすための得難い自由を手に入れることではないでしょうか。フランク ミュラーは、腕時計を、時を知るためだけの道具から解放し、時を遊ぶ道具として創造し、自由な時間を提供してくれます。1日が24時間/12時間制に分割された古代エジプト時代以来、すでに確立され、誰も疑うことなく積極的に運用してきた時間そのものを、秩序にとらわれない、新しい“時の哲学”として打ち立てたのです。
フランク ミュラーは、2021年の新作を発表。
いち早く、フランク ミュラー愛好家の皆さまには、ジュネーブ近郊、フランク ミュラー ウォッチランドから、オンラインにて最新情報をお届けします。
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