週末に、しかも快晴であることに、心を躍らせている。ステアリングを握る手も、シフトレバーに添える指も、感触が心地良い。旅に出たい、と想いを巡らせながら、丁寧に計画してきた。旅の目的は、宿である。移動は、適度な距離で、好みの食事、居心地、できればクリーンなスパが欲しい。ウエッブを繰っていくと、新登場も多い。フッと、マウスを止め、見入った。富士山を間近に仰ぎ見る、旧知のスピードウェイ脇にホテルが新設されていた。海外の著名ホテルによるオペレーションで、唯一無二の個性が堪能できると記されている。
ホテルが建てられている位置が、興味深い。都心からでも、1時間プラスの距離。しかも、将来、すぐ側に高速道路のスマートインターチェンジも開通するらしい。ホテル棟から西の方角には、かなり気まぐれではあるらしいが、日本の最高峰がそびえる。視線を転じれば、国際的な格式を誇るレーシングコースが眼下に広がる。静寂とエグゾーストノート。文字通り、静と動が共存している。ホテル棟全体の佇まい、ゲストルームの設え、落ち着きのあるロビーフロアの居心地。ホスピタリティはもちろんだが、存在そのものが唯一無二である。
ホテルには、歴史的なレーシングカーだけを厳選し、展示しているミュージアムがある。かつて、夢中で見入った歴戦の車輌が、間近にディスプレイされている。その当時、脳裏に焼き付いたであろう印象的なシーンが、記憶をたぐり寄せ、猛スピードで駆け巡っていく。テクニカルなサーキットコースがあり、断崖絶壁のラフロードもある。そんな高揚した気持ちを落ち着かせるためには、まず、スパで大きな浴槽に浸かる。身も心も、リラックスさせる。最終コーナーには、仕上げのための吟味された食事と、相応しい飲み物が待っている。
せっかくの旅だから、時間など気にしないことにする。そういった意味では、クレイジー アワーズは、旅での時間の過ごし方を自由闊達にしてくれる。文字盤の時針を、まったく気にしないで過ごすことができる。ひょっとして、フランク ミュラーは、旅のために、これまでの厳密な時間の規則を取り除いてくれたのかもしれない。もちろん、義務のように過ごしてきた日常の習慣などからも解放され、クリエイティブな時間を創造。クレイジー アワーズは、これまでの“時の哲学”とは異なる、新しい“時の哲学”が提案されたのだと確信する。
V45CH 5NNR/ VANGUARD CRAZY HOURS
フランク ミュラーは、時の概念についてまったく新しいアプローチに挑み、クレイジー アワーズを創作したのです。1日の時間が、24時間/12時間制に分割されたのは、ファラオが君臨した古代エジプト時代。以来、文字盤の数字や目盛りは、デザインを変えることはあっても役目を変えることなど、ただの一度もありませんでした。ところが、常識を翻し、時刻表示を変えてしまった腕時計が存在します。ごく当たり前に慣れ親しんできた、12時間に分割された時の在り方を打ち破ったのです。文字盤の一番上には、12というインデックスがありません。毎時、60分間という時間が経過し、正時を迎えると、時針は、現時刻から次の時刻へと瞬時にジャンプします。時間は流れるのではなく、飛び越えていくのです。そして、時針は、次の60分間が経過するまで、その時刻を指したまま留まっています。文字盤に配列されたインデックスは、通常とは異なり、気ままに配置されています。インデックスの配列を自由に考え、実行したことは、複雑時計に異彩を放つフランク ミュラーだから可能になったことです。 クレイジー アワーズだけの自由な時針の動きは、特別な意味を持つに違いありません。
Location of Photo Shoot :
FUJI SPEEDWAY HOTEL