フランク ミュラーが初期の頃から創り続けるオーソドックスなケースが、ラウンドケースのクロノグラフです。いまでこそ、トノウ カーベックスなど、独創的なケースで知られていますが、現代の天才時計師として讃えられ、その技術が世界中で認められた初期の作品には、多くのラウンドケースが採用されています。たとえば、紹介しているラウンド ダブルフェイス クロノグラフはもちろん、世界で初めて腕時計に“トゥールビヨン”機構を搭載したのもラウンドケース。伝統的なスタイルの内部に、革新的で超複雑な機構を搭載した象徴的な存在であり、自身の歴史とともに歩みを止めることもありません。
ROCKを運営している舩木三兄弟の三男が、舩木 良さん。実は、かなりの自動車好きで、真剣に取り組んできたラリー競技では、海外での大会にドライバー兼チームオーナーとして参戦したほどです。良さんは、フランク ミュラーのクロノグラフを手にし、思いがけない感覚を味わったと言います。「あんなに真剣に腕時計を眺め、つくり手の熱意や想いが伝わってきたのは初体験でした。機械式の腕時計が、ゼンマイの戻ろうとする力を利用し、ひとつひとつの歯車を動かし、1秒とか1分という時を刻んでいくところに、小宇宙を感じてしまったのです」。良さんが、自動車を自在に操ることができるのは、エンジンやトランスミッションなど、機構を理解しているからですが、同じ魅力を、機械式の腕時計からも感じとってしまったようです。